歯周病治療

歯周病について

歯周病について

歯周病症状の段階

  1. 軽度歯周病 ・歯周ポケットの深さは4~5mm
    ・歯肉の炎症が悪化し、歯槽骨や歯根膜が破壊され始める
    ・歯の動揺はほとんどなく、根分岐部病変もない
    軽度歯周病
  2. 中等度歯周病 ・歯周ポケットの深さは6から7mm
    ・炎症がさらに拡大し、歯槽骨が半分近く破壊される
    ・歯の動揺は軽度にあり、根分岐部病変もある
    中等度歯周病
  3. 重度歯周病 ・歯周ポケットの深さは8mm以上
    ・歯槽骨が半分以上破壊される
    ・歯の動揺は著しく、根分岐部病変も重度
    重度歯周病

歯周病と歯肉炎

歯肉炎とは

歯周疾患の直接的な原因は、歯垢(ブラーク)です。歯垢は生きた細菌の塊で、そのほとんどが酸素の少ない場所を好むため、歯と歯肉のすき間(歯周ポケット)に潜んでいます。この歯垢(プラーク)中の細菌が出す毒素によって、歯肉に炎症が起きてしまうのです。

症状

  1. ブラッシング時に出血しやすい

歯周病とは

歯肉炎の状態が続くと、歯周病菌が歯を支える骨を破壊します。それにより、歯周ポケットが深くなったり、歯の揺れを感じることもあります。痛みが出ることもありますが、揺れ以外の症状を感じないことも多いです。

症状

  1. 出血しやすい
  2. 歯が揺れている
  3. 口臭がする

歯周病になる原因

歯周病になる原因

主な原因

  • 歯石
  • 不正咬合
  • 合わない被せもの
  • 歯垢に唾液中のカルシウムが沈着し硬くなったもので、歯磨きでは落とせない
  • 歯磨きが不十分になりやすく、歯垢が残りやすい
  • 被せ物のまわりに隙間があり、歯垢がつきやすい
  • 口呼吸
  • 歯ぎしり
  • 乾燥した状態で、歯垢がたまりやすい
  • 歯や歯肉に強い力がかかり、炎症が起こりやすくなる

歯周病になりやすい人

  1. 歯の汚れが残っている人 歯にプラーク(歯垢)がつくと、歯の表面は細菌がたくさん付着した状態になります。このような人は歯周病のリスクがかなり高まります。歯周病は生活習慣病ですので、日々の生活習慣が大事になります。歯みがきや、お口の中のケアによって歯を清潔にすることは歯周病だけではなく、虫歯予防の基本です。
  2. たばこを吸う人 歯周病に対する喫煙の影響はとても大きなもので、歯周病を悪化させる代表的な要因の一つです。吸う人は吸わない人に比べて、歯周病になりやすく、進行速度も速くなります。なおかつ、治療をしても治りにくいことも分かっています。主な理由は、下記のとおりです。

    ・歯肉の血行が悪くなり、歯肉に酸素や栄養が十分に行きわたらない
    ・歯肉の抵抗力が弱まり、細菌と戦う白血球の働きが半減し、免疫力が低下
    ・唾液の分泌が抑えられるため、プラークや歯石が付きやすい
  3. 口を開けている人 口を開けていると、口の中が乾燥するため、唾液による自浄作用が低下し、白血球が炎症部位に到達しづらくなるため歯周病菌が増幅します。鼻が悪い人で、慢性的に口呼吸の人も要注意です。
  4. 糖尿病の人 高血糖になると、唾液の分泌量が減り、口の中が乾いてきます。そのため、歯周病菌が増殖してきます。そのため、糖尿病の人が口の中のケアを怠ると、歯周病になりやすいです。
  5. 歯ぎしりをする人 歯ぎしりをすると、歯に力がかかり、歯や歯肉へのダメージが歯周病を悪化させます。歯ぎしりには3つ種類がありますが、最も悪いものが、歯を横にスライドさせる歯ぎしりです。

    ・歯を横にギシギシとスライドをする
    歯ぎしり

    ・くいしばり
    ・歯をカチカチさせるタッピング

    歯は垂直方向(縦方向)の力には耐えられますが、横からの力には弱く、歯ぎしりで歯周組織にダメージを与えてしまいます。
  6. 降圧剤、抗癇癪(てんかん)剤、免疫抑制剤などの薬を
    飲んでいる人
    薬剤の使用により歯周病が引き起こされる場合があります。特に降圧剤の一部は服用することによって歯肉を腫れさせることがあります。特に中高年になって、血圧が高くなり、降圧剤を使用して、歯周病を招くケースが多くなります。

歯周病と全身疾患

歯周病と全身疾患
  1. 歯周病と心臓病 歯周病と心臓病には深い相関関係があり、歯周病原因菌が心臓の血管をつまらせ、心臓の血管の細胞を障害することがアメリカの研究で明らかになりました。動脈硬化症や大動脈瘤にかかった細胞を検査すると、多くの歯周病関連菌(Pg菌=Porphyromonas gingivalisなど)が検出されます。
  2. 歯周病と糖尿病 糖尿病の人は、高血糖になり、毛細血管がもろくなります。そのため、糖尿病でない患者さまと比較した場合、毎日のお口のケアを怠ると、歯肉炎を起こしやすくなり、そのまま放置すると重度の歯周病になりやすいと報告されています。
  3. 歯周病と肺炎 肺炎の中でも、口の中の細菌が肺に入り込み炎症を起こす肺炎を誤嚥性肺炎や嚥下性肺炎といいます。高齢になると、食べ物を飲み込むための喉の筋力が低下し、本来食道に入るものが、気管支に入ってしまうことがよくあります。誤嚥性肺炎を起こした患者さまの肺からは、歯周病原因菌(嫌気性グラム陰性桿菌など)が高い頻度で見つかることから、歯周病と肺炎に強い関連性があるとされています。
  4. 歯周病と骨粗しょう症 閉経後骨粗鬆症の患者さんにおいて、歯周病が進行しやすい原因として最も重要と考えられているのが、エストロゲンの欠乏です。エストロゲンの分泌が少なくなると、全身の骨がもろくなるとともに、歯を支える歯槽骨ももろくなります。また、歯周ポケット内では、炎症を引き起こす物質が作られ、歯周炎の進行が加速されると考えられています。また、歯周病で歯を失うことにより、食べ物を噛む力が弱まり、バランスよく食事することが難しくなるため、身体全体の骨密度が低下し、悪循環が起こりやすい傾向にあります。
  5. 歯周病と早産 歯周病にかかっている妊婦さんとそうでない妊婦さんを比較した場合、歯周病にかかっている妊婦さんは、早産の可能性が高まると報告されています。アメリカでは、歯周病と早産の関連性に関する報告が多数あり、早産であった妊婦さんのお口の中を調べてみると、歯周病の重度である割合が高く、多量のプロスタグランディンE2が影響を与えていると見られます。

歯周病と抜歯

歯周病と抜歯

歯周病で抜歯を行った方が
いいケース

歯周病で抜歯が必要な場合は、歯周病が重度に進行してしまい、揺れが強いために噛むことができない、というケースです。歯周病は治療をしても、抜けそうなくらい強い揺れがあると元には戻りません。そのため、残しておくことで明らかに日常生活に支障をきたす場合は抜歯をお勧めします。

歯を抜かずに治療する
メリット・デメリット

永久歯は抜いてしまうと再び生えてくることはありません。ですので、歯をできるだけ抜かずに治療してもたせることは非常に大切です。一方で、治療しても改善しない歯をそのままにしておくと、常に痛みを感じるようになったり、急な腫れや強い痛みが出る可能性があります。また、歯を抜かずに限界まで残しておくことで歯の周囲にある骨が溶けてしまし、その後のインプラント治療が難しくなる可能性があります。

歯を抜いた場合の
メリット・デメリット

歯を抜くことで、歯周病の感染となっている原因が取り除かれるので、その部分での細菌感染がなくなります。ですので、周囲の骨を溶かしている状況下ではその進行を止めることができます。ただし、歯を抜いてしまうと元には戻れないので、その必要性をよく検討する必要があり、また、歯を抜いてそのままにしておくと、周囲の歯並びが悪くなってしまうので注意です。

歯周病のセルフチェック

中等度の歯周病

  • 歯を磨くときやかたい物をかじったときに血が出る。
  • 朝起きたとき、口の中が粘つき、妙な味がする。

重度の歯周病

  • 歯肉がはれてブヨブヨになる。
  • 歯肉を指で押すと血や膿みが出る。
  • 歯がうき、かたい物がかめない。
  • 歯肉から膿みが流れ出る。
  • まわりから口臭が気になるといわれる。

歯周病治療の流れ

歯周病治療の流れ

治療・検査の流れ

  1. 歯周基本検査
  2. スケーリング
  3. 歯周精密検査
  4. SRP
  5. 歯周精密検査
  6. フラップ手術
  7. SPT(歯周安定期治療)

精密歯周病検査について

検査内容

  • 歯周ポケットの深さ(各歯の周囲4ヶ所の深さを測定)
  • ポケット測定時の歯肉出血
  • 歯の動揺度
  • プラーク(歯垢)付着度

保険治療と
自費治療の違い

保険治療と自費治療の違い

保険適応の歯周病治療

  1. 軽度歯周病の場合 スケーリングという歯の表面に見えている汚れや歯石を掃除して治療します。スケーリング自体は1回で終わりますが、炎症の状態によって2、3回行うこともあります。
  2. 中等度歯周病の場合 歯周病がより進行した場合は、スケーリングだけでは汚れをきれいにすることができません。歯茎の内部にも歯石がついており、それをきれいにする必要があります。SRPという治療法で、歯肉の内部にある汚れや歯石をきれいにして歯の表面をツルツルにします。SRPは1本の歯に対して治療時間がかかるので、全て歯が残っている場合だと、6回程度かかリます。その後、SPT(歯周安定期治療)へと移行します。
  3. 重度歯周病の場合 さらに歯周病が進行している場合は、上記のスケーリング、SRPに加えて、外科的な治療であるフラップ手術を行う必要があります。SRPが終わった後の歯周精密検査の結果を元に必要性を判断します。フラップ手術は最大で7本を一度に治療できるので、最大で4回で全ての部位を治療することができます。治療後は治りを待ってから再度歯周精密検査を行います。その後、SPT(歯周安定期治療)へと移行します。

歯周病の治療と予防

歯周病の治療と予防

歯周病の予防について

歯科医院でできること

歯の表面にある歯石や取りにくい残った汚れを完全に落とすことができます。

自宅でできること

自宅では日々のケアで歯周病の進行を予防することができます。

歯周病の治療法

スケーリングについて

スケーリングとは歯についた歯石をきれいに掃除する治療方法です。歯についた歯石の中でも歯肉より上に見えている歯肉縁上歯石をきれいにする治療です。

治療で期待できる効果

スケーリングによって歯石がなくなると、歯周病の細菌が減るので、歯肉が引き締まり、赤みや腫れがおさまります。ただし、歯周病が進行している場合はスケーリングだけでは治癒しません。

歯周病の治療方法

歯周病の治療方法

SRP

SRPとは、スケーリング・ルートプレーニングの略で、歯周ポケットが正常より深くなり、歯茎の中に汚れや歯石がついているばあいに行う治療です。歯肉の中をキュレットという器具を用いて手作業で汚れをキレイにします。目では直接見えないので、歯の表面を触りながら確認して汚れを落とします。歯肉は直接傷をつけませんが、歯肉の中に器具を入れるので、場合により歯肉に麻酔をします。

歯周外科治療(フラップ手術)

フラップ手術

フラップ手術は、SRPを行い、歯肉の中に埋もれていた歯石をきれいにしてもなお歯周病が治らない場合に行う治療です。SRPは手探りで歯肉の中にある汚れをとります。深い歯周ポケットがある場合、手探りでは完全な歯石の除去は困難ことがあります。そこで、麻酔をして歯肉をめくって、目で直接見えるようにして、残っている歯石の徹底的な除去や汚れをきれいにするのがフラップ手術です。

こんな場合に行う治療です

SRP治療後、再度歯周病の精密検査を行い、十分な改善が認められない場合に行います。その場合、多くの汚れが奥にあるために取れきれていません。

治療効果

歯周ポケットの正常化と歯石の除去ができます。再生療法を併用した場合は、ある程度の骨の再生ができます。

骨移植

フラップ手術

フラップ手術は、SRPを行い、歯肉の中に埋もれていた歯石をきれいにしてもなお歯周病が治らない場合に行う治療です。SRPは手探りで歯肉の中にある汚れをとります。深い歯周ポケットがある場合、手探りでは完全な歯石の除去は困難ことがあります。そこで、麻酔をして歯肉をめくって、目で直接見えるようにして、残っている歯石の徹底的な除去や汚れをきれいにするのがフラップ手術です。

こんな場合に行う治療です

SRP治療後、再度歯周病の精密検査を行い、十分な改善が認められない場合に行います。その場合、多くが汚れが奥にあり取れきれていません。

歯周組織誘導法(GTR)

歯周組織誘導法(GTR)とは

GTRとは、歯周病によって失われた組織をもとに戻す再生治療の一つです。

こんな場合に行う治療です

歯周病菌によって歯の周囲にある歯槽骨が溶けてしまった場合に行います。

治療効果

この治療によって失われた歯槽骨を再生することができます。ただし、どのようなケースでも適用できるわけではなく、重度な歯周病や、骨が全体的にさがってしまったケースでは適用が困難です。